「SQL(エスキューエル)」。 IT系のインターンシップ情報や、少し意識の高いビジネス書で、このアルファベット3文字を見かけたことはありませんか?
多くの大学生、特に文系の学生さんは、「SQLとは、エンジニアが使う難しいプログラミング言語でしょ?自分には関係ないや」と思って、そっとページを閉じてしまうかもしれません。
もしそう思っているなら、あなたはとてつもなく大きなチャンスを逃している可能性があります。
この記事では、その誤解を180度ひっくり返し、SQLとは、実はマーケティングや営業といったビジネスの現場でこそ最強の武器になる理由を、IT初心者の大学生にもわかりやすく解説します。
前回の「データベースは”図書館”だ!」という記事の続編として、今回はその図書館で目的の情報を自在に取り出すための「魔法の言葉」を、あなたに伝授します。この記事を読めば、SQLがあなたの将来のキャリアをどう変えるか、その可能性にきっとワクワクするはずです。
SQLとは「データベースと会話するための”魔法の言葉”」である
前回の記事で、データベースは「膨大な情報が整理された、超優秀な図書館」だと解説しました。そして、その図書館には、情報を管理する「優秀な司書さん(DBMS)」がいます。
では、あなたはその司書さんに、どうやって「〇〇という本を探してください」とお願いすればいいのでしょうか? 日本語で話しても、英語で話しても、司書さんは世界の誰の言うことも聞けるように、たった一つの専門言語しか理解してくれません。
その、司書さん(データベース)と会話するための、世界共通の専門言語こそが「SQL」なのです。
SQLはプログラミング言語と何が違う?
「やっぱりプログラミング言語なんじゃないか」と思いますよね。半分正解で、半分不正解です。 Python
やJava
のような汎用プログラミング言語が、家を建てたり、車を作ったりできる「万能な工具箱」だとすれば、SQL
は「データベースへの命令」という目的だけに特化した、非常にシンプルな「専用工具」です。
覚えるべき命令(文法)も少なく、特にビジネスで使う命令は限られているため、初心者でも比較的習得しやすいのが大きな特徴です。
基本の”魔法の言葉”(コマンド)は4つだけ!
SQLの基本的な命令は、主に以下の4つです。
SELECT
(探してきて!) データベースから特定のデータを取り出す、最もよく使う命令です。INSERT
(追加して!) 新しいデータをデータベースに登録します。UPDATE
(書き換えて!) 既存のデータを新しい情報に更新します。DELETE
(削除して!) 不要になったデータを削除します。
ビジネスの現場、特にマーケティングや営業職では、このSELECT
を使いこなし、データの中から「宝探し」をする能力が、あなたの市場価値を劇的に高めます。
なぜSQLが文系の武器に?マーケティング・営業の「知りたい!」を瞬時に解決
「で、結局その”魔法の言葉”が、どうしてマーケティングや営業で武器になるの?」 それは、現代のビジネスが「データに基づいた意思決定」で動いているからです。SQLを使えれば、あなたは「なんとなく」や「勘」に頼るのではなく、事実(データ)に基づいて、的確な戦略を立てられるようになります。
あなたが企業のマーケティング担当者になったと想像してみてください。上司からこんなことを聞かれます。
上司の質問: 「先月、うちのECサイトで化粧水Aを買った20代女性って、他に何を買ってるんだろう?次のキャンペーンの参考にしたいから、至急リストアップして!」
SQLが使えない場合… 「えーっと…エンジニアの〇〇さんにお願いしないと…。でも今忙しそうだし、データを出してもらうのに3日くらいかかるかも…。」
SQLが使えるあなたの場合… 「承知しました!」と席に戻り、データベースに向かって、SQLでこう命令します。
SQL
SELECT 商品名 FROM 購入履歴
WHERE 年代 = '20代' AND 性別 = '女性' AND 購入商品 = '化粧水A';
すると、データベースは一瞬で該当する顧客が他に何を買っているかのリストを返してくれます。あなたは、そのデータを見て、「化粧水Aを買ったお客様は、乳液Bも一緒に買う傾向が強いようです。セット割引キャンペーンを提案します!」と、わずか10分で上司に具体的な提案ができるのです。
SQLが解決する、ビジネス現場の「知りたい!」
- マーケティング担当者:
- 「過去3ヶ月で、広告A経由で会員登録し、一度も商品を買っていないユーザーリストが欲しい」
- 「リピート顧客が最もよく閲覧している商品カテゴリは何だろう?」
- 営業担当者:
- 「半年前から購入が途絶えている、関東地方の法人顧客リストを営業アプローチ用に抽出したい」
- 「今月の売上トップ10の顧客は誰で、主に何を買っているんだろう?」
これらの「知りたい!」に、SQLは瞬時に、正確に答えてくれます。エンジニアに依頼する手間なく、自分で直接データにアクセスし、仮説検証を高速で繰り返せる。このスピード感と自律性が、あなたのビジネスパーソンとしての価値を飛躍的に高めるのです。
初心者でも大丈夫!大学生がSQLを3ステップで学ぶための独学法
「自分もSQLを操れるようになりたい!」 そう思った初心者の大学生のために、今日から始められる独学法を3ステップで紹介します。
STEP1:ブラウザ上でSQLに「触れて」みる
まずは、Progate
や海外のSQLZOO
といった、インストール不要でブラウザ上で学べるインタラクティブな学習サイトを使いましょう。ゲーム感覚でSQLの基本的な文法(特にSELECT
文)を「書く」体験をすることが、最初の目標です。ここで完璧に覚える必要はありません。「こう書くと、こうデータが取れるんだ!」という感覚を掴むことが重要です。
STEP2:自分のPCに「練習環境」を構築する
ブラウザでの学習に慣れたら、次は自分のPCに無料で使えるデータベース(MySQL
やPostgreSQL
など)をインストールし、自分だけの「練習用の図書館」を建ててみましょう。少し難易度は上がりますが、「自分のPCでデータベースを動かしている」という事実は、大きな自信とモチベーションに繋がります。インストール方法は「(データベース名) インストール Mac/Windows」などで検索すれば、丁寧な解説記事がたくさん見つかります。
STEP3:サンプルデータで「分析ごっこ」をしてみる
自分だけの図書館が完成したら、そこに練習用の本(サンプルデータ)を入れて、実際に分析の練習をしてみましょう。 世の中には、ECサイトの売上データや、国の統計データなど、無料で公開されているサンプルデータがたくさんあります。それらを自分のデータベースに入れ、「もし自分がこの会社のマーケティング担当者だったら?」と想像しながら、SQLを使って色々な角度からデータを抽出してみるのです。この「分析ごっこ」こそ、最高のSQL実践トレーニングになります。
まとめ
今回は、「SQLとは何か」、そしてそれがビジネス、特にマーケティングや営業の現場でいかに強力な武器となるかを、初心者の大学生にもわかりやすく解説しました。
- SQLとは、データベース(図書館)と会話するための世界共通の「魔法の言葉」。
- SQLを使えれば、ビジネスの「知りたい!」に即座にアクセスでき、データに基づいた的確な意思決定が可能になる。
- 初心者でも、無料の学習サイトやサンプルデータを活用すれば、今日からでも独学を始められる。
データが石油よりも価値を持つと言われるこの時代に、SQLはもはやエンジニアだけのものではありません。文系・理系を問わず、すべてのビジネスパーソンにとっての「新しい読み書きそろばん」になりつつあります。
新学期が始まったばかりの今、新しいスキルを学ぶ絶好のチャンスです。 この記事を読んだら、まずは無料で始められる「Progate」のSQLコースを覗いてみませんか?アカウント登録だけで、あなたはすぐに最初の”魔法の言葉”を打ち込むことができます。
その一文が、データという広大な海を航海するための、あなたの羅針盤になるはずです。
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